近所に住んでいる人の良いおばちゃん。
どこかから
キウイの木をもらってきて植えたらしい。
「実がなったら
わけてあげるね」
その目の輝きは、
夢見る少女のそれだ。
特に趣味という趣味もなく生きてきたおばちゃんが
やっとみつけた生き甲斐なのかもしれない。
何という残酷な話だろう。
木をわけてくれた人は、
何も教えなかったのだろうか。
言うべきか、言わざるべきか。
実に悩ましい。
キウイは雌雄異株の植物。
雌株と雄株があり、
両方が一緒にあってはじめて
実をつけることができる。
キウイを一本だけ植えておいても、
永久に実はならないのだ。
いつまでも実を待ち続ける姿を見るのは
あまりに忍びない。
しかし、真実を教えることで
おばちゃんの生き甲斐を奪うことにはならないだろうか。
結局言い出すことができずに
今日も日が暮れたのだった。
知らない方が幸せということもある
2006年02月10日 23:43未分類