実はずっと前に手に入れていたんだけど、
この本について今ごろ書くことになってしまった。
その経緯についてはおしまいに。
さてこの本のタイトルは
『ストレスフリーの仕事術—仕事と人生をコントロールする52の法則』
(原題: Ready For Anything: 52 Productivity Principles for Work and Life)
となっている。
著者デビッド・アレンさんが提唱する
GTD (Getting Things Done: 仕事を成し遂げる技術) について
その基礎となる考え方を
52の法則にまとめたものということでよろしいか。
GTD の考え方について
ここでエラそうに説明することはできないので
まだの方はぜひ読んでみていただきたいところだけど、
ひとつだけエラそうに言わせてもらいます。
この本について書かれたレビューを見ていると
「第5章だけでいいじゃん」という感想を目にすることがある。
第5章というのは GTD を実践するための作業内容が書かれた章。
ここで言われたことに従えば
確かに GTD をやってみることはできるだろう。
が、「ここだけでいいじゃん」という読み方をしてしまった人は
実に気の毒だと思う。
せっかく買った本の最も重要でない部分しか見ていないから。
確かに GTD の魅力はそのシンプルさにあると思う。
いつでもどこでも使えるし
使うツールを選ばないし
実践にあたって複雑なステップもない。
なので「やり方」だけなら
この第5章 (10ページ) だけでも最低限のことは説明できるだろう。
ここで問題なのは、
第5章に書かれているのは「やり方」であるという点。
例えば数学を学んでいるとして、
基本的な問題に答えを出すだけなら
「やり方」を知っていればできるだろう。
与えられた条件を公式にあてはめれば解答にたどり着く。
だがそれでは
自分が何をやっているのかもわからないまま
出てきた数字を解答欄に書き込んでいるだけで
その問題を理解していることにならない。
あるいはウェブサイトの XSS 対策を行うときに
「要するにこの関数でくくればいいんでしょ」
という発想もそれと同じ。
「なぜこれを行うのか」
「なぜここが重要なのか」を理解せずに
やり方だけを追いかける作業というのは実に脆い。
想定されている事態からちょっとでも外れたことが起きると
もう対処できなくなるし、
作業が身についた後で
自分なりにアレンジすることもできない。
あるいはやろうとして、重要な部分を見失ってしまう。
なので例えば GTD の重要なステップである
週次レビューを怠ったり忘れてしまったりして
ついにはまったくやらなくなるかもしれない。
だから本書では
あえて「やり方」に多くのページを割くことなく
最後に配置されているんじゃないだろうか。
ポイントは GTD の理念であって、
やり方はひとつの例ですよ、という意味で。
「GTD とは何ぞや」というところから始める人は
第5章から読むのもいいかもしれない。
そもそも最終的に自分が何をすることになるのかわかってないと
それまでの説明もふわふわとしてつかみづらいだろうから。
が、それにしても本気で get things done したいなら
その後ででも1章から4章までを熟読した方がいい。
ここさえ吸収できていれば
やり方はあとからついてくるものだから。
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ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
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デビッド アレン (著)
田口 元 (監訳) -
なお、著者デビッド アレンさんの最初の著作である
『ストレスフリーの整理術』(原題: Getting Things Done) の
新訳版もまもなく発売されるとのこと。
「はじめてのGTD」という副題のとおり
GTD 入門にはまずこの一冊だと思います。
ぜひとも「あわせて読みたい」ですね。
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はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
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デビッド・アレン (著)
田口 元 (監訳) -
さて今ごろこの本を取りあげることになった経緯について。
買って読んでいる途中でなくしてしまい
そのままにしてたから。本当にごめんなさい。
で先日、この本の監訳者である田口 元さんに
話の流れで「実はこれこれこうでごめんなさい」と言ったら
突然届けてくださった。
しかも一枚の付箋に
さしあげます!
とだけ書いて。
仕事を成し遂げる技術だけでなく
男前なプレゼントの仕方も教わった気がする。