プレゼンテーションに関するイベントで「人前で発表をするときに気をつけたい8つのことがら」という発表をしてきました。その概要をメモしておきます。
ここで挙げたのはこの8つ。
- 準備
- 自己紹介
- スライド
- 時間
- 話し方
- コミュニケーション
- ツール
- しめくくり
ではそれぞれの中身を。
1. 準備
最悪の事態に備える
行った先で、すべてが期待どおりに動くことはまずないと思ってます。「ネットが繋がると思うな」「自分のPCが使えると思うな」「Mac (Windows) があると思うな」ぐらいでちょうどいい。
現地ではうまくネットに接続できないかもしれないから、ファイルは事前にダウンロードしておく、ウェブサイトの画面はスクリーンショットを撮っておく、デモはローカル環境で動くものを用意する。
接続がうまくいかなかったり急に動かなくなったりで自分が持って行ったパソコンが使えないかもしれないから、スライドのファイルは Dropbox に上げて、同じものを USB メモリなどに入れておく。
ファイルがあっても Keynote が使えるとは限らないから、PDF 化したものも用意しておく。
ファイルタイプとデータソースをそれぞれ複数用意しとくと安心かな、と思います。
言い訳をしない
前提を共有するというのはいいと思うんです。「自分はエキスパートとして来たのではなく、いち学習者としての発表です」といった具合に。
ただ、発表そのものの準備不足について言い訳をしない方がいいと思ってます。
誰だって自信がないし不安だし緊張するから、先に言い訳をしておきたい気持ちにもなりがち。でもやれ仕事に追われてたとか風邪ひいてたとか夜オバケが出るとか、そんなことは聞いてる人には関係ないですね。
そもそも準備万端完璧な状態で臨めることなんてない。
発表のクオリティについて先に言い訳をすると最初から期待を下げることにもなってしまうので、やめといた方がいいんじゃないかと思います。
今の自分にできることを、精一杯やろう。
2. 自己紹介
ゆっくりと、はっきりと
要するに「名前をはっきり言おう」というただそれだけのことなんだけど、聴き取れないことがよくあります。
自分の名前は自分にとってはものすごくあたりまえなものだから、発音がなおざりになりがちなのかもしれません。
でも聞いてる人にとっては初めて聞く名前であることも多いので、聞き取りやすいように丁寧に発音しましょう。
なぜここにいるのか
自己紹介で一番大切なのはこれだと思います。
自己紹介に使える時間は限られているので、そこで発表内容と関係のない「ラーメンが好きです」とか「猫を飼っています」とかいう話にあまり長く時間を使うのはもったいない。
今から話す内容と自分はどういう関係なのか、自分はなぜここにいるのか。聞いてる人が知りたいのはそっちなんじゃないかな。
もっと個人的なことを聞きたい / 話したいという場合は、懇親会でゆっくりと。
俺様節に注意
上でも書きましたけど、人前に立って準備万端 自信満々 余裕綽々なんて人はあまりいない。だからつい、自分を大きく見せようとしてしまいます。
でもこれは完全に逆効果。自分はどういう者であるかを伝えるために必要な物語や数字を伝えるのはいいんだけど、それをやる心のどこかに「俺様はよお」の要素が含まれていないか、よく気をつけた方がいいと思います。
自分を大きく見せようとすればするほど、自分は小さく、薄っぺらくなっていく。
3. スライド
最初に全体像を示す
何の話をしているのか、どこへ連れて行かれるのかわからないままずっと人の話を聞くのは、幾分しんどいことかもしれません。
最初にお話の全体像を示しておいて、段階が進むたびに「いまここにいます」というのを伝えるようにすると、受け取る方もそれなりに心の支度ができるので、それだけ集中して話を聞くことができるんじゃないでしょうか。
主役はどっち
スライドは不格好より美しい方がいい。当然です。
でも、クオリティを追求した結果、スライドが主役になってしまっては本末転倒。主役は話し手で、スライドはあくまで補助に過ぎないはずですね。
同じ理由で、どうしても必要な場合以外はスライドを印刷したものは配らないようにしています。あれを配ると、話を聞かずにずっと紙とにらめっこする人が出てくる。
印刷したものが必要ならあとでお渡ししますから、今は俺の話を聞け。
詰め込まない
あれも伝えたいこれも伝えたい、ああ誤解を与えないようにこれも書いとかないと。
とやった結果、図と表と文字でびっしりになってしまったスライドをよく見ます。これ読めませんし、読みたくありません。
前項とも関わるんだけど、スライドに全てを入れる必要はありません。詳細な説明は人間の仕事。
考え方はいろいろだと思うけど、スライドの役割は、言葉では伝わりにくいことを図で示す、象徴的な数字や語句を見せて主題を明らかにする、飽きさせない程度に目を引く、動きを出して眠気をさます、などであって、必ずしも全ての情報を詰め込む必要はないと思います。
上を使う
会場によりけりだけど、椅子がずらっと並べてあってスクリーンがあまり高くない位置にあるような場合、後ろの席の人にはスライドの下半分が見えないことがよくあります。
是非とも覚えて帰ってもらいたいキーワードや数字を下の方に書いてしまうと「何か見えなかったしもういいや」となってしまうかもしれないので、できるだけ画面の上の方を使うようにしています。
現地のレイアウトをあらかじめ知ることができる場合は、画面のどのへんまでなら確実に見えるか確認しておいた方がいいですね。
会場入りしてから、他の人が発表してる間に急遽修正することも多いけど。
4. 時間
厳守
もうこれは「厳守」としか言いようがない。
早く終わるぶんにはまだマシなんだけど、予定時間を過ぎてしまうと
- 後に続く発表者がいる場合、その人たちの予定に影響を与えてしまう
- 会場を有料で借りている場合、全体の開催時間が延びてしまうと運営者に契約上の責任や金銭の問題が発生する可能性がある
- 次の予定がある人や終電が気になる人などにも迷惑がかかる
など、自分の発表の中に収まらない影響が出ます。
なかなか完璧にはできないけど、予定時間を大きく過ぎるようなことはないようにしたい。
5. 話し方
えー、より、間
どんなに準備しても立て板に水とはなかなかいかず、次の言葉が出てくるまでの一瞬の間をつなぐのに、無意識に「えー」とか「あのー」というつなぎの言葉を入れてしまいます。
でもね、えー、こういう言葉を使うとですね、あのー、音の響きが美しくないというのもありますけど、えー、詰まってるんだな、というのが、あの、ありありとね、伝わりますよね。
ならいっそ、黙ってしまうというのはどうでしょう。えー、じゃなくて、間を取るの。
言葉が出てこなくて一瞬時間を稼いでるのは同じことなんだけど、間を取ると、いきなり何か意図があるかのように見えます。うまくやれば。
ただしこれは自信ありげにやる必要があるので練習や経験が必要かも。心の中は緊張しまくりなんだけど、だからといって目をそらしたりせず、聞いてる人の方をじっと見据えながら、ときどきゆっくりと視線を動かしつつやるのがコツです。
自分の話で笑わない
お笑い五箇条にもあるように、自分のネタで笑うのはできるだけ避けたい。
もちろん、あえて笑うことに何らかの効果があることを確信して意図的にそれをやる場合や、ところどころ自分で笑ってみせることを一つの芸風にしている方などはその限りではないと思いますが、特にそのような意図がない場合には自分の話の面白いところで笑うのは避けた方がいいんじゃないかな、と思ってます。
オンマイク
自分は自分から一番近い位置にいるから声はよく聞こえるんだけど、広い会場だと後ろの方の人にどれくらい聞こえているかはなかなかわかりにくいですね。
特に講演用のマイクなどは雑音を拾わないよう広い範囲の音を取らないようになっているはずなので、口から離しすぎるとあまり声を拾ってくれません。
近づけすぎたら音が割れたりするんじゃないか、とちょっと心配になるけど、最近のマイクはよくできてますし、少々割れたとしても聞こえないよりはマシです。
あとまああれだ、声が小さいのは話し手の責任だけど、音質の問題なら設備や音響担当の人のせいにできるというか。
6. コミュニケーション
内輪ネタに注意
これはその場にいる人と前提によって変わってくると思いますけど、少なくとも一部の人にだけわかる話をするのは避けた方がよさそう。特に特定の人を取りあげて、わかる人にだけわかるネタでくすっと笑ったりするのを。
グループ内だけでわかるネタというのはわかる人からは共感を受けやすいので手を出してしまいやすいんだけど、「ああ、それを知らない者は部外者なのね」と寂しい思いをする人がいないようにしたい。
反応をもらう
会場で即席アンケートをとるために、手を上げてもらいたいこともあると思います。そのとき、例えば「FaceBook やってらっしゃいますか?」と聞くだけでは、いったいどう反応していいかわかりにくいですね。うなずけばいいのか、手を上げてほしいのか。
反応をもらうなら、どう反応してほしいのかを明確にした方がよさそうです。
手を上げてもらうなら、一番簡単なのは自分が手を上げながら質問すること。手を上げながら「iPhone 持ってるひと!」と言えば、大抵の人は手を上げてくれます。
挙手の、その後
手を上げてもらったら、その後がだいじ。本当にだいじ。
さきほどの「iPhone 持ってるひと!」のあと、人数や割合を把握しただけでそのまま次に移ってしまうと大変悲しい。
前の方にいる人は、後ろの人がどれくらい手を上げていたのかわかりません。え、聞かれたけど、結局どうだったの。
会場の人に手を上げてもらったら、必ず会場にフィードバックしましょう。「だいたい3割ぐらいですね」「あれ、お一人だけですか」など。
7. ツール
絞り込んで、使い込む
発表に使えるツールはたくさんあるし、便利なものが次々と登場しています。
どれもこれも魅力的に見えるのでいろいろ手を出したくなりますけど、絞り込んで使い込んでいかないと、いつまでも本番でまごつくばかりでなかなか上達しないんじゃないかな。
何かこう伝統工芸の職人さんみたいな話になりますけど、いざというとき頼りになるのはやっぱり長年使い込んだ道具だと思います。
手になじんだものを中心に据えつつ、新しいものを少しずつ試してみる、ぐらいのバランスでいきたい。
8. しめくくり
終わったの?
クラシックのコンサートに行ってよく知らない曲が演奏されるといつが終わりかよくわからなくて、周りが拍手したからつられて拍手、みたいなことになりませんか。なりませんかね。
やはり発表をするということになると、終わった瞬間に拍手が起きるというのが理想ですね。お互いに気持ちがいい。
でもいつが終わりかわかりにくい発表をしてしまうと、聞いてる人も「あれ、終わり・・・?拍手していいの・・・?」と戸惑ってしまいます。終わりなら終わりとはっきりわかるよう明示した方がいいですね。
定番の文句は「以上です。ご清聴ありがとうございました」だと思いますけど、個人的には途中でのツッコミ大歓迎なので「静聴」していただかなくても大丈夫です。
次につなげる
せっかく人に話を聞いてもらう機会を得たのに、その場で話してはいお終い、ではもったいない。
興味を持ってくれた人から反応をもらう方法を用意しておくとか、紹介した製品のバージョンアップ予定を伝えるとか、伝えきれなかった部分をフォローアップする場を設けるとか、何らかの方法で次のステップにつなげるような準備ができるといいな、と思います。
ひとまず、以上
先日のプレゼン勉強会で発表した内容は以上なんだけど、
その後も思うことがいくらかあったし
これから発表をしていく間に考えが変わっていくこともあると思うので
またまとめ直すなり追記するなりしていきます。
少しずつね
そうは言ってもなかなか思ったとおりには実践できませんね。
エラそうに書いたけど自分の発表の録音などを聞いて「ああ、このへん残念だ」と思うことはたくさんあります。
ただ、いきなり理想的な発表なんてできないけど、毎回ひとつだけでもいいから意識しながらやってみてあとは数をこなすのが大事なんじゃないかな。
いつの日か「今日は素晴らしくうまくいった!」と納得できるような発表ができるといいですね。
2012/06/12 18:47
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